「ドローン界のGAFA」を目指すべく活動している株式会社RedDotDroneJapan。これまで京都府亀岡市にあるサンガスタジアム by KYOCERAにて、ドローンパイロット育成事業の実証を進めてきました。今回は、株式会社RedDotDroneJapanの代表取締役である三浦望さんにスタートアップ実証実験促進事業(PoC)に関連したインタビューをさせて頂きました。

<会社概要>

会社名:株式会社RedDotDrone Japan
代表取締役:三浦 望
設立:2019年11月
資本金:1,646万円
従業員:1人
https://reddotdrone.com/ja

自己紹介

三浦さん:
はじめまして。株式会社RedDotDroneJapanの三浦と申します。私はベルギーでのビジネス経験やシンガポールでの自分自身の会社の起業経験を経て、2017年2月にRedDotDroneJapanの親会社にあたるRedDotDrone Pte.Ltd.をもう一名の日本人の共同創業者とシンガポールにて設立しています。そこで展開していたドローンに関する事業を日本でも展開しようと考えて2019年11月に日本法人を設立しました。事業としては、主にドローンに特化したソフトウェア開発を行なっています。業界として見てみるとドローンの機体などを開発するハードウェアビジネスや、ドローンサービスを運用するビジネスが多い傾向にありますが、我々はまだ世界的にも少ないソフトウェアに注目しました。


(サンガスタジアム by KYOCERA e-SPORTS ZONEにて/編集部撮影)

起業をしようと思ったきっかけは?

三浦さん:
私は今でもエンジニアを自負していますが、以前はエンターテイメントやショービジネスのシステム開発を行なっていました。その時点でもカメラや映像を扱うソフトウェアを開発していたのですが、「空飛ぶカメラ」としてのドローンの魅力に次第に魅了されていきました。また、それまでの空間管理、3D姿勢制御など、今までの経験と知識を活かしたドローン開発ができるのでは、と考えてこの分野にフォーカスしていきました。

冒頭でも申し上げましたが、最初はシンガポールで会社を立ち上げ、そこから日本法人を立ち上げました。日本法人設立の経緯は、スタートアップとして生活していくには高すぎるシンガポールの家賃や、次第に年齢が上がっていく上での海外での病気リスクなどが理由です。そのため、自分は日本に戻り、日本でのビジネスに専念するための日本法人立ち上げを決断して帰国しました。

どのようにビジネスモデルに出会ったのでしょうか?

三浦さん:
当時住んでいたシンガポールで、ドローンに興味を持っていた日本人の一人が今の共同創業者となる方です。前述の通り、私はドローン自体に元々興味を持っており、その共同創業者と話すことで仕事にできそうだと感じ、ドローンの同好会的な活動をしていました。そこから早いもので1年後くらいには会社を立ち上げるまでになり、また複数のVCからの出資も決まり、よりドローンでのソフトウェア開発にコミットしていくという決意が強まりました。

このPoCに応募されたきっかけは?

三浦さん:
日本法人を立ち上げてからは、スポーツの空撮に関わるソフトウェア開発をメインで手掛けていたため、ある程度広いエリアで、ドローンを使った実験ができるところがないかと探していました。その当時、私の会社は京都の五条が本社だったため、サンガスタジアムに5G回線などの環境が整っているというのを知っていました。色々と調べていくと今回のPoCを募集しているのを知り、すかさず応募しました。

今回はどのようなPoCを行いましたか?

三浦さん:
弊社はドローンを使った様々な技術を持っていますが、その中でも「遠隔操縦」というものがあります。これを使うとサンガスタジアムから地球の裏側でもドローンを飛ばすことができます。仕組みとしては、電話回線などを使ってドローンに指示を伝えているため、その回線状態が良好である必要があります。サンガスタジアムでは5G回線もあり、WiFi自体も非常に速い。そしてeスポーツ向けのディスプレイやコンピュータもあり、遠隔操縦に必要な一連の設備が全て揃っていることから、様々な実験を進められます。


(サンガスタジアム by KYOCERA e-SPORTS ZONEにて/ご本人撮影)

具体的な狙いは、どのようなところだったのでしょうか?

三浦さん:
遠隔操縦は、遠隔操縦ならではの安全確認や飛ばし方がありますが、遠隔操縦自体がまだ知られていない技術でもあるので、それを理解したドローンパイロットは皆無です。そのため、まずは遠隔操縦を正しく理解したドローンパイロットを増やそうと思っています。そのためには、まず遠隔操縦について正しく知ってもらうことが大切だなと考えて、去年はパイロット育成をしているスクールに声を掛け、遠隔操縦に興味を持ってくれた人にまずは体験してもらいました。ここでは「具体的にどのような仕事ができるのか?」や「初めての技術で、何ができるのか?」といった部分が明確に伝えられないところが課題であると分かり、遠隔操縦のユースケースがもっと増えないと、興味自体持ってもらうことが難しいことが去年の実証実験で分かりました。

その反省から、今年度は具体的に、「遠隔操縦を使ってこれができる!」というのを見せつつパイロット育成を行うように進めているところです。

そこに対する費用感や掛かったリソースを教えてください

三浦さん:
合計で300万円ほどかかりましたが、人的なリソースに多く割かれたと思います。特に日本法人は私1人ということもあり、色々と人的なリソースの面で苦労しました。

苦労した点について教えてください

三浦さん:
私たちは普段はソフトウェアを開発をおこなっている為、「パイロット育成」に関しては、既存のスクール事業をおこなっている企業様と連携して行う必要がありました。その中で、遠隔操縦に特化したカリキュラムの作成や、遠隔操縦とはどういうものなのかを正しく理解してもらうための啓蒙活動に苦労しました。

どのような成果を得られたのでしょうか?

三浦さん:
サンガスタジアムの5G回線や速度の速いWiFiはとても良い反響で、遠隔操縦を行うにはベストな環境であることが分かりました。いまのドローン産業には、まだまだ問題が多くあります。例えば、ドローンパイロットは法的な理由の側面もありますが、同時にドローン1台しか操縦できなく、掛け持ちができないという効率の悪い仕事になっています。それが遠隔で対応可能になると、安全な場所で集中して行うことができますし、1人が複数のドローンを操作することもグッと現実的になると思います。そうしていくと、コストの削減やサービス展開の可能性も大きく広がっていくため、遠隔操縦はドローン産業の根底も大きく変えることができる技術という認識ができました。

 


(サンガスタジアム by KYOCERA にて/編集部撮影)

PoCについて全体的な感想やご意見を教えてください

三浦さん:
今年度もこのPoCへと参加させて頂きたいと思っていますが、サンガスタジアムだけでなく、京都府亀岡市が持つ施設や観光資源をうまく活用しながら、それらにドローンを掛け合わせて事業を展開していきたいなと考えています。まだまだドローン産業は黎明期であり、「PoCばかりしていて、ちっともお金が稼げない。」と揶揄される時もありますが、私たちがそのダークホースとしていち早くサービス化し全国に知らしめていきたいです。

PoCの実施を受け、この先何か考えていることを教えてください

三浦さん:
遠隔操縦を活用して、京都府亀岡市が持っている施設や観光資源をうまく活用して、何か展開できないかなと現在考えているところです。遠隔操縦を使った「観光」の可能性もありますし、遠隔警備や遠隔点検もできたらなと思っています。まずは「観光」で亀岡市に貢献しながら、横展開として警備や点検に少しずつ入っていけたら、と考えているところです。

この先に描かれている展望を教えてください

三浦さん:
従来、人間がしていた仕事を、これからはコンピュータやAIが代わりに行っていくかもしれない中で、私たちは「人」をどう支援できるか、「人」の良い部分をいかに増幅できるか、というところに強く興味を持っています。遠隔操縦自体もそこの思いから派生した技術です。1人のパイロットが複数台のドローンを操縦できるようにしてあげたいと思っていますし、人の持っている能力を増幅させるようなソフトウェアをもっともっと開発していきたいと考えています。

この他にも大きな夢や成し遂げたいことがたくさんありますが、まずは空飛ぶドローンを中心として自分達が出来るを全方位的に進めていきたいです。パソコンが世の中に出始めた黎明期は、WindowsというOSが出てきて、WordやExcelといったツールがリリースされ、という感じで、みなさん日常の中で普通に使っていますよね。ドローン業界に当てはめると、ようやくハードウェアが出揃ってきたなというところでして、そこから「誰がWordを作るのか?」「はたまた、Excelを作るのか?」という動きになっていると感じます。私たちはドローン業界でいうWordやExcelを作っていきたいと考えていますので、まさにドローン業界のGAFAならぬマイクロソフトになりたいなというところがありますね。

最後にこれから起業を考える人や後輩起業家に一言!

三浦さん:
今は世の中の状況的にも、かなりしんどい時期だと思います。そのため、起業はチャレンジングなことだと思いますが、この時期にやるからこそ伸びる面もあります。例えば、Google社は不景気な時期に起業しましたが、今では巨大なサービスにまで成長しています。ある意味、世の中が不景気だったり、国際情勢が不安定だったりと、ネガティブと思われるタイミングにこそ、チャンスが眠っているかもしれません。ぜひ頑張って下さい!


参考(活用された補助金)

・サンガスタジアムby KYOCERA
・イノベーション・フィールド実証事業

本記事の問い合わせ先

一般社団法人京都知恵産業創造の森 スタートアップ推進部
E-mail:startup@chiemori.jp